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涼宮ハルヒコの憂鬱2 エヴァンゲリオン創作小説など(総合トップへ) 動画版1 動画版2 結論から言うと、そのまさかだった。 その後の休み時間、ハルヒコはあたしのポニテをつかむと、強引に教室から連れ出し、廊下を進みだした。 大またに歩くハルヒコとあたしを、すれ違う生徒が何事かと見守っている。はっきり言おう。恥ずかしい。あたしは両手で顔を隠して、屋上へ出るドアの前まで引きずられていった。 「協力しろ」 ハルヒコが完全な断定口調で言った。やつが今つかんでいるのはあたしの顔。両手で挟まれて、口がタコみたいになっているのが分かる。 「にゃにをきょうりょくしろって?」 一応、訊いてみる。 「俺の新クラブ作りだ」 「どうしてあたしが、あんたの思いつきにつきあわなくちゃいけにゃいのよ」 「俺は部室と部員の確保。お前は書類関係を頼む」 聞いちゃいねえ。 あたしはハルヒコの手をふりほどいた。 「何のクラブよ?」 「そんなことはどうでもいいだろ。作ってから考える。いいか? 今日の放課後までに調べておけよ。俺は部室を探すから」 嫌だ。めんどい。なんてとても言えなさそうだ。こんなところで、こんなヤツにあたしの操を渡したくない。 なんとか逃げる口実を探しているうちに、やつは行ってしまった。 授業中、それとなく思いとどまるように言ってみたけれど、まったくの無駄だった。もう既に頭の中では夢と妄想のエレクトリカルパレードが、あふれるロクでもないアイデアの喝采を浴びて行進中らしい。 終業のチャイムとともに、あたしは猛然と立ち、その場を逃げ出そうとした。ハルヒコはそれを読み切っていたように、あっけなくポニテをつかみ、あたしはまた顔を手で隠してひきずられていった。 「どこいくのよ」 「部室に決まってんだろ」 指の間から周囲をうかがうと、昼と同じ、好奇心に満ちた生徒の顔が見えた。 歩くから手を離して。 一階へ降り、とある部室の前でハルヒコが立ち止まる。 文芸部。プレートにはそう書いてある。 「ここだ」 ハルヒコは言うなり、必要以上の勢いでドアを押し開いた。 空っぽの同然の部屋。あるのは使われなくなった長テーブルと錆の浮いたパイプ椅子。それに本棚、男子生徒、パーテーション、ガラクタが入っている箱。 男子生徒? 一人の男子生徒が本を読んでいる。あまりに風景に溶け込みすぎて、ちょうどページをめくらなければ、そのまま見逃してしまうところだった。 「ここがこれから俺たちの部室!」 ハルヒコが嬉々として言った。その顔をいつでも保っていてくれればいいのに。 「待ってよ。ここは文芸部でしょ」 あたしはドアの方を指差した。 「勝手に使うと怒られるんじゃないの?」 「ところが文芸部は部員が一人だけ。交渉して許可を得た」 「許可ってあの人の?」 指を本を読み続ける生徒に向ける。 「ああ。本が読めればいいってさ」 ハルヒコが得意げに言う。 その文芸部員は色白で、凛々しく見えなくも無い顔はまったくの無表情。似合っているような、そうでないようなメガネが、ゆいいつの装飾ってカンジだ。 いきなりその生徒が顔を上げて、でもこちらは見ずに言った。 「長門有希」 それだけ言って読書を再開する。 「ねえ、長門さん。この人、ここをなんだか分からない部室にしようとしてるんだけど、それでいいの?」 「構わない」 「たぶん、ものすっごく迷惑をかけると思うけど……」 「別に」 「そのうち、追い出されるよ」 「どうぞ」 他人事のような、まったく鷹揚を欠いた返事が続く。 「まあ、そういうこった。これで部室の確保はクリア。だな」 ハルヒコが割り込んできた。 「これから毎日、この部屋に集合な。絶対に来いよ。来なかったら、探し出して、引きずってでも連れてくるからな」 もうそうしたでしょ。 それでもあたしはジャニーズでも作れないような笑顔を前に、あいまいに返事した。 「次は部員だ、あと二人」 もうあの長門って人を数に入れてる。 翌日の放課後、ハルヒコは速攻で姿を消し、あたしはしょうがなく部室へ向かった。 長門有希はすでにいて、やっぱり本を読んでいた。 「なに読んでるの?」沈黙に耐えかねて言った。 長門有希は答えずに、本の表紙をこちらに向けて見せた。タイトルから推測するに恋愛小説? 「おもしろい?」 長門有希は中指でメガネの位置を直した。 「ユニーク」 「どのへんが?」 「ぜんぶ」 「本がすきなの?」 「わりと」 「そう……」 「……」 耐えられない。帰りたい。 突然、ドアが開いてハルヒコが顔を出した。 「やー、わりぃわりぃ! 捕まえるのに苦戦したよ」 ハルヒコは手を挙げて愛想良く言った。もう一方の手は、どこかの男子学生の襟首をつかんでいる。 小柄で華奢、顔は恐ろしいほどの童顔。小学生が制服を着ているみたいだ。 「紹介するぞ。朝比奈みつるだ」 「どっから連れてきたの?」 「二年の教室で見つけた」 「見つけたって……。何の説明もなく?」 ハルヒコが力強く頷く。 「拉致じゃない」 「拉致とは人聞きが悪いな。誘拐だよ」 「同じよ」 その男子生徒を改めて観察する。その不幸な上級生は、何かに夢中な時にハルヒコが出すバカ力に引きずられる恐怖を味わったらしく、震えていた。 「えと……それはそれとして、どうしてこの人を?」 「見ろよ」 ハルヒコは指を涙目の朝比奈みつるさんの鼻先につきつける。 「かわいいだろ? そして、萌えだ。萌え」 「萌え?」 あたしにゃわかりません。 「重要な要素だぞ。物語にはこういうのが必要なんだ。いいか、古くはピノコという……」 こいつ、絶対に危ない。そう改めて断定したとき、ハルヒコがまた喋りだした。 「それにな!」 ハルヒコは信じられないすばやさで、朝比奈さんの股ぐらをひとつかみ。 「うぅぅ、うっわー!」少年のような悲鳴が部室に響き渡る。 「デカイぞ。こんな小さいのに、俺よりもでかいんだぜ。この意外性が、またこいつから無限の可能性を感じさせる」 わたしは顔を隠して、押し付けられた昆虫のように手足をバタバタさせている朝比奈さんから目をそ らした。長門有希は、ここには自分ひとりしかいないように、本を読み続けている。 この人もヤバい。 「で……。朝比奈さんが、萌えとかいうのと、そ、そ、その。……。が、だから、その意外性だけでここに連れてきたの?」 「そうだ」 頭が狂いそう。 朝比奈さんが入部をOKしたのは、ハルヒコの強引さを考慮しても意外というほかに無く、まずいことに、認めたくないけど、自分と、長門有希を含めると四人まで部員が揃ってしまった。 部屋の隅にうずくまった朝比奈さんを見つつ、あたしは言った。 「それで、名前とかはどうするの?」 こういうのが、ハルヒコの暴走を加速させてしまうんだと思いつつ、聞いてしまった。 「名前はたった今、決めた」 SOS団。
* どうもあたしとハルヒコが何かたくらんでいるという噂が流れているらしい。
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